付け焼き刃の学力では太刀打ちできない
中学受験のために小学生の子どもを夜遅くまで毎日塾に通わせるのには抵抗があるという家庭も多いだろう。積極的な意味で中学受験をしないという選択だ。では、中学受験をしないという選択をした家庭の子どもは、小学生の間は毎日ただ遊んでいていいのだろうか。
ちょっと前までは、それでも良かったのかもしれない。しかし、これからの子どもはそうはいかない。「脱ペーパーテスト」を掲げる大学入試改革や、「グローバル人材」の育成など、日本の従来の教育観を揺るがす議論が今盛んだ。方向性としては、「付け焼き刃の学力ではなく、本質的な学力に焦点を当てよう」ということ。
しかしここであることに気づいてほしい。これまでは良くも悪くも「ペーパーテスト至上主義」だったからこそ、ぎりぎりまで遊んでいても、ラストスパートで集中すれば大逆転が可能だったわけだ。言い方は悪いが、付け焼き刃の勉強でもなんとかなったわけである。
でもこれからは、「付け焼き刃の学力では太刀打ちできないようにしよう」という方針で、世の中が動いている。付け焼き刃ではダメ。要するに短期間では間に合わない。つまり「時間がかかる教育をやっていこう」という話なのだ。中学3年生になってから高校受験勉強を一生懸命やればなんとかなるという話ではなくなるのだ。
中学受験をするのでない限り、小学生のうちは、目先のテストの点数や成績にあまりこだわる必要はない。しかし少なくとも、いずれ高校受験勉強を始めるときに、困らない程度には基礎学力をつけておきたいものである。ではそれは、いったいどの程度の学力なのか。小学校のテストでだいたい80点がとれていればいいのか。小学校の通知表で、3段階評価のうち、真ん中の「2」がほとんどという状態で大丈夫なのか。
拙著『高校受験のために小学生の親が今からすべきこと』(旺文社)の取材において、高校受験に強い進学塾の講師複数名に話を聞いたところ、「学校のテストは満点が基本です」と異口同音に答えた。「8割とれていればいいんじゃないか」と思っていたお母さん、お父さんも多かったのではないだろうか。たしかにお母さん、お父さんが子どものころはそう言われていたかもしれない。でも今は事情が違う。