原因不明の腹痛が続く 主婦Aさん(36歳女性)

「このところ腹痛でPTAの仕事を休んでばかり」というAさん。周囲から「ドタキャンのAさん」と皮肉を言われる。今回の症状は、腹痛。8つの病院で検査しても異常は見つからない。症状も改善しない。

検査で見つからなかったように、Aさんに体の異常はない。異常はないが、実際に症状を感じてしまう。Aさんはこれまでに「首が痛い」「めまい」「膝が痛い」という理由でドタキャンをしてきたので、家族や知人など周囲の反応は「またか」である。しかし、仮病のように、意識して病気だと嘘をつくのではなく、Aさんはあくまでも具合が悪いのだ。

Aさんの病気は、身体表現性障害。体には異常がなくても、病気のような症状が出ることがある。女性に多く、「アルプスの少女ハイジ」のクララが長期間歩けなかった原因も、身体表現性障害の一種と考えられる。

精神的な病気だという自覚がないため病院を転々と巡る、いわゆるドクターショッピングをする。担当医の治療方針が正しいかを、他の医師に意見を聞くセカンドオピニオンとは別で、納得できる診断を求め病院を転々としてしまう。

言葉にして伝えるコミュニケーションが苦手なため「自分を気にかけてほしい」という不満が原因で、体の症状に現れてしまうのだ。自覚することが大事なので、治るには時間がかかる。

Aさんが心の問題だと自覚し、精神科で治療を開始したのは診断がついた2年後だった。

健康な人でも、ストレスで、異常がないのに体の症状を感じることは割とあることだ。なかには、身近な人が脳腫瘍になったと聞くと、「頭痛がする。自分も脳腫瘍かも」と、重病にかかっていると思い込んでしまう人もいる。医師から「脳腫瘍ではない」と診断されると頭痛が治ってしまう。