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大幅な予算拡大は「クールジャパン」効果か

昨年、東京国際映画祭は大きくシフトチェンジした。首相官邸、経産省による「クールジャパンとの連携」の号令とともに、一昨年まで6億円程度だった事業費はほぼ倍増した。昨年度は、経済産業省、文化庁、東京都、国庫補助金から約11億円が拠出されている。これは活動支出全体の約70%にあたる。そして、追加事業費のほとんどを託された広告代理店は、昨年、『ニッポンは、世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく。』という異例のキャッチコピーを書いた。

今年、経産省は5年ぶりにカンヌ映画祭の「ジャパンパビリオン」事業を支援した。しかし内容は場違いな「クールジャパン」の押し売りだった。運営側の思惑通り、国内メディアは「カンヌで『くまモン』が大人気」などと報じたが、ほとんどの海外メディアは相手にしなかった。

これは「ジャパンデイ プロジェクト」事業の第1弾で、運営元は映像産業振興機構とアサツーディ・ケイ、それに東京国際映画祭でも委託を受けていたクオラスである。映像産業振興機構の市井三衛事務局長によると、経産省から1億200万円の助成金が支払われる予定だという。

その後、私が経産省に行った情報公開請求によって、ジャパンデイプロジェクトへの助成金は「ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金(J-LOP)」だとわかった。これは経産省と総務省による155億円の共同基金で、東京国際映画祭も助成を受けている。

問題はこうしたクリエイティブ産業への支援が、現場に届かず、映画会社や広告代理店といった「映画村」のなかで計画、実施されている点にある。J-LOPは基金管理を映像産業振興機構に委託している。ここには前述したクオラスの社員が出向している。またユニジャパンの理事13人中7人は映像産業振興機構の理事を兼任している。さらに政府にJ-LOPの予算の提言を行っている経団連のコンテンツ部会や政府の知的財産戦略本部など多数の公職にもこれらの理事が名を連ねている。