不要な混乱を引き起こした中国政府

「本来の価値以上の価格で取引されていた商品が、相応の価格に戻った」という意味で、今回の中国危機は、サブプライムローン関連証券の暴落により08年9月に発生したリーマン・ショックに似ている。

中国人民銀行(写真左)は9月8日、外貨準備高激減の理由として為替介入を行ったとの声明を発表。中央銀行が介入を公式に認めるのは異例だ。(写真=Getty Images)

異なるのは、資本主義の先進国・英米では、金融当局が市場のルールをなるべく保ちながら問題を解決しようと努めたのに対し、中国では当局が職権と規制によって市場の動きを押しとどめようとしたことである。

下落の過程で、株価についてのメディアの報道は中国政府の統制を受け、警察は「悪意のある空売りを行った者」や「意図的に噂を流した者」を摘発。国営を中心とする中国の大手証券21社は、「上海総合指数が4500に戻るまで、保有株を売却しない」「優良銘柄で構成する上場投資信託を総額1200億元(約2兆4000億円)以上購入する」といった株価維持策を発表した。

さらに上海・深セン(※)の上場企業の半数にあたる1400社以上が「株価に重大な影響を与える事項がある」等の理由で株式の売買を停止してしまった。おかげで中国株に投資していたファンドや投資信託は株を売却できなくなり、顧客からの解約請求にも応じられなくなった。これも政府の指示であろう。 ※=土の左に川

私が学生時代に学んだマルクス経済学の先生は、「資本主義経済は基本的に無政府状態であるため、どこかの時点で経済恐慌が発生する。しかし共産主義の計画経済の下では、恐慌が起きる心配はない」と説明していた。中国の金融当局も最近は市場原理を重んずる姿勢を見せてはいるが、共産主義を採る中国では、計画経済よろしく政府が市場をコントロールするやり方が基本原則なのだ。