ブームが続く最大のポイントは価格か?
米国のクラフトビールの歴史は、戦いの歴史でもある。当初は取るに足らない存在だったため大手メーカーも静観していたが、次第に力をつけてくると危機感を募らせ、流通業者の締めつけなどさまざまな圧力をかけるようになる。また、クラフトブルワリーを買収して市場に参入するほか、自らも「クラフト風」ビールをつくるなどして亀裂が深刻化、クラフトブルワーVS大手の「ビール戦争」が勃発する。戦いはクラフトブルワー同士でも発生。こうした争いはいまも続いている。
ちなみに、米国のクラフトビール業界団体が定義するクラフトビールとは、「小規模」「独立性」「伝統的」の3条件を満たすもの。少量生産で、大手資本から独立し(大手資本が入る場合は25%未満)、原則として麦芽100%のビール(例外もある)でなければならない。
米国でのクラフトビールの興隆は世界中に影響を与えている。日本のブームはもちろん、ドイツやチェコ、英国といった欧州のビール伝統国にも伝播しているという。
気になるのは、日本でもクラフトビールがこのまま成長し、一定のポジションを得られるかどうかだ。最大のポイントはやはり価格だろう。クラフトビールの値段は大手メーカーの約2~3倍。いまやビール市場の主力となった第3のビールと比べると、約4~6倍になる。いくらうまさが違うとはいえ、毎日の晩酌には高すぎる。どうしても週末やハレの日に楽しむ特別なビールにならざるをえない。価格を下げたくても、生産量が少ないゆえにコスト削減には限界がある。世界最高水準とされる日本の酒税も足かせだ。
それでも業界関係者によると、シェア2%は十分に狙えるという。実際、クラフトブルワリーは増えている。醸造設備と飲食店がひとつになったブルーパブも人気だ。ビールに限らず、世の中、大手の量産品ばかりではつまらない。毎日はムリでもたまには個性豊かなビールを飲みたい。
うれしいことに最近、筆者の家の近所にクラフトビールを専門に扱う酒屋ができた。店内で飲める「角打ち」も楽しめる。仕事も一段落したことだし、一杯やりにいくとしよう。