大鹿氏を含め、多くのトヨタマンにとって「整理整頓」の四文字には深い意味がある。キレイに揃えて並べるだけでは、単なる「整列」にすぎない。ひとたび乱れるとゴチャゴチャ状態に逆戻りしてしまうので、片づけたことにはならない。
すなわち、整理=「いるもの」と「いらないもの」を分けて、「いらないもの」は捨てること。そして、「整頓」=「必要なもの」を「必要なとき」に「必要なだけ」取り出せるようにすること。当たり前のようだが、このシンプルで強い片づけのルールが全社員に浸透しているのである。
では、目の前にあるモノが「いるもの」か「いらないもの」か、どのように決めればいいのだろうか。その見極めが例題を解くポイントにもなっている。
「トヨタでは、『時間』が判断基準になっています。身の回りのモノは、(1)いま使う、(2)いつか使う、(3)いつまでたっても使わない、に大別できます。(1)は今日明日に必要なもので、(3)は即刻処分、と判断は簡単ですが、悩ましいのは(2)のいつか使う、です。ここで大事なのは、いつまでに使うかの期限を設けるという作業。例えば、資料が収められたファイルは直近の3カ月間はデスク上に保存(1カ月ごとに右から左へ並べる)し、その後は収納棚・引き出しなどへ移します。名刺は1年間保存し、その間に使わなかった分は処分する。期限をできるだけ短く切ることがデスクを乱雑にしないコツといえます」(同)
名刺を捨てるのには抵抗があるかもしれないが、片づけに聖域なし。1年も付き合いがなければ、その後の接点はほぼないと思ってよい。連絡をする必要が生じたときも、会社の代表番号を調べれば何とか連絡はつくはず。業種や仕事内容によって、いつまでに使うかの期限は異なるが、個々人でその目安をつくっておくとよいのだ。