「マイルドハイブリッド」の採用

ハイブリッドのバッジがスズキ車に付いたのは2005年2月に軽自動車「ツインハイブリッド」の生産が打ち切られて以降、10年ぶり。

その好例がホンダだ。ホンダは「フィット」などの主力モデルに高性能な新ハイブリッドシステム「i-DCD」を大々的に展開したが、その基幹システムを作ったのはドイツの大手サプライヤーのひとつであるシェフラーだ。このシステムは5回もの連続リコールに見舞われるなど、未曾有の大失敗例として取り上げられることが多い。

実際、ホンダ、シェフラー両社の技術に対する見立てが甘かったのもたしかだ。技術の成熟度やコストが下がるにつれ、自動車メーカーがすべてを自社開発しなくとも、その分野で深い知見を持つサプライヤーがパッケージソリューションとして提供するものをセットアップすれば、高性能な車を作れてしまうというようになるのは自明の理だ。ホンダは技術者や経営者の車作りに関する知見が浅く、それを遂行する実力がまだなかったために大問題を起こしてしまったが、トライの方向性は間違っていなかったのだ。

スズキは前出の「ソリオ」に、マイルドハイブリッドなるシステムを採用した。エンジン車には必ず付いている発電機にスターター、アシスト用モーターとしての機能も持たせ、最大50Nmのトルクで駆動をアシストすることができるようにしたものだ。

そのマイルドハイブリッドのシステムサプライヤーはデンソーだが、発電機「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」を作ったのは三菱電機、バッテリーは東芝のリチウムイオン電池だ。ハイブリッドとしての能力はごく小さいが、そのシステムを買ってきっちりキャリブレーション(実車で特性を最大限に生かすためのチューニング作業)をやれば、「HYBRID」のバッジをつけることができてしまうのである。

この動きは先に挙げたi-DCDをはじめ、すでにモーター単独で走行可能なストロングハイブリッドの世界にも広がりはじめている。EVや燃料電池車、また自動運転でさえもいずれそうなっていく運命で、低価格商品に特化した経営を貫くのであれば、コモディティ化が進んでから頑張っても遅くはない。

自動車技術のコモディティ化は、スズキの“強気”のもうひとつの理由である。ソリオの特徴はマイルドハイブリッドだけではない。エンジンも超がつくほどの高効率ぶりを実現している。ガソリンを燃やして得られた熱をどのくらい実際の動力に変えられるかを示す熱効率は最高で38%と、ストロングハイブリッド用のミラーサイクルエンジンを除けば世界トップクラスの数値。さらにJC08モード走行時の平均熱効率35%はトヨタ自動車やホンダ、VW以上のものだ。