「1カ月間返品OK」「利息は当社負担」といった販売は、高いものを買う“恐怖感”や罪悪感を取り除く効果がある。人は一度使用したものに愛着を感じ、手放したくないという心理も巧みに利用している。客に気持ちよく買ってもらうための計算し尽くされた戦略とは。

一般的に、「脅し」は相手に心理的な緊張を引き起こし、注意喚起や関心をひきつける効果があると言われている。だが、ビジネス上、高圧的な脅し発言をしては商売は成立しない。どんな表現が儲けにつながるのか。

「歯を磨く習慣を啓蒙するために、どんな表現が効果的か」を調べる実験がある。脅し(警告)のレベルを「弱・中・強」として反応を見ると、もっとも歯磨き習慣が定着したのは弱い脅しのケースだった。(表を参照)

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「弱い脅し」が実はもっとも効果的

目白大学教授で心理学者の渋谷昌三氏が解説する。

「実はメッセージを聞いた直後、強い脅しを受けた人がもっとも不安な気持ちになり、歯磨きをします。でも時間が経過すると強制されたことへの反動でそれほどしなくなる。強く脅しても歯磨きに対する考え方を根本から変える原動力にはなりません」

では、なぜ弱い脅しがもっとも説得の効果が高かったのか。

「半信半疑でも、『じゃあ、歯磨きしてみようかな』と本人に思わせるのがポイント」(渋谷氏)

この実験をビジネスに置き換えれば、例えば、強い脅しの宣伝文句をする通販の健康食品を購入しても、その後は買うのをやめるといったケースが考えられる。「顧客に継続して購入してもらうにはやんわりとした“脅し”がいい」(同)。

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