「1カ月間返品OK」「利息は当社負担」といった販売は、高いものを買う“恐怖感”や罪悪感を取り除く効果がある。人は一度使用したものに愛着を感じ、手放したくないという心理も巧みに利用している。客に気持ちよく買ってもらうための計算し尽くされた戦略とは。
例えば、販売価格の設定が競合他社より高かったとしても、プレゼンテーションの中身によっては勝利することもできる。
例えば、伝えたいメッセージを絞り、それを繰り返すと心理的効果が高い。ある外国の裁判で被告が無罪だという証明を2~3回繰り返した場合、陪審員の46%が説得されたが、10回繰り返した場合、82%が説得されたという報告もある。
ただ、ビジネス上は全く同じ表現では客に飽きられてしまい逆効果なので、言い回しや切り口をその都度変えて商品のよさなどを伝えることが望ましい。
目白大学教授で心理学者の渋谷昌三氏はこう語る。
「もし、最初のプレゼンがうまくいかなくても、しばらく時間がたってから説得の効果が表れることがあります。これをスリーパー(仮眠)効果と言います」
仮眠効果が出やすいのは不思議と信憑性が低い情報源や人物からの情報。にわかには信じられなくても時間が経過すると情報源は忘れられ、情報内容だけが記憶に残ることがある。
「仮眠効果が出るのはおおよそ1~2週間後のこと。だからその頃に諦めずに相手を再訪する。繰り返し会ううちに第一印象が悪くても、次第に親近感がわきます。これを熟知性の法則と言います」(渋谷氏)