第三者委員会が混乱を助長!?

7月21日に公表された東芝の「不適切会計」に関する第三者委員会報告書は、歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、「経営判断として不適切な会計処理が行われた」「経営トップらを含めた組織的な関与があった」などと、経営者の責任が厳しく指摘しただけでなく、問題の背景となった企業風土についても言及した。この報告書を受け、田中久雄社長のみならず、前社長の佐々木則夫副会長、前々社長の西田厚聡相談役も辞任したほか、10人の取締役、執行役員が辞任した。

日本を代表する伝統企業東芝のガバナンスや企業風土を厳しく断罪した第三者委員会報告書は、マスコミ、世間からは肯定的に評価されており、東芝は、報告書で指摘されたガバナンスの改善に向けて、7月29日に社外取締役の伊丹敬之氏を委員長とする経営刷新委員会が発足し、再生に向けて取組みを始めているように思われている。

しかし、これまでの経過と報告書の内容を見る限り、今回の第三者委員会の活動には多くの疑問があり、東芝の問題をめぐる混乱を一層助長し、解決を妨げかねないように思える。

東芝は、4月3日に、社外の専門家を含む特別調査委員会を設置して、インフラ関連の工事進行基準に係る経理処理の問題について調査を行った結果、さらに調査を必要とする事項が判明したとして、5月8日に、第三者委員会を設置した。そして、有価証券報告書及び第1四半期報告書の提出期限の延長の承認を受け、6月25日株主総会では、前期末の決算報告を見送り、7月21日に第三者委員会報告書を公表。8月末に有価証券報告書、9月14日に第1四半期報告書を提出し、9月下旬に臨時株主総会が開かれる予定となっている。

まず疑問なのは、連結売上6兆円もの規模の会計処理に関する問題を第三者委員会で調査するのに、その期間が僅か2カ月余りと極めて短期間に設定され、調査対象も4つに限定されていることだ。そのような期間での限られた事項の調査では、問題の本質や根本原因を明らかにすることはおよそ不可能である。

最大の問題は、監査法人の監査の妥当性の評価は調査の目的外だとして評価判断を回避し、まさに「不正会計」の核心である会計監査人の監査法人との関係を調査対象から除外していることだ。