財務報告を適切に行えるのか

また、不可解なのは、2015年3月期末の決算が固まる前に、第三者委員会の調査が終了していることである。委員会報告書で指摘された「不適切会計」のほとんどは「損失先送り」であり、それによって2012年から13年にかけての決算が「意図的な見かけ上の利益の嵩上げ」と訂正され、損失が前倒しされることで、逆に、その後の期末の決算は上方修正されることになる。実際に、報告書による決算訂正で14年3月期末は304億円の上方修正であり、15年3月末は、訂正によってさらに利益が拡大するものと思われる。

一方で、過去の決算が損益悪化の方向で大幅に修正されることに伴って、「繰り延べ税金資産」「海外企業ののれん」の減損を行うことになれば、数千億単位で下方修正される可能性もある。

つまり、2015年3月期決算は、評価・判断によって大きくその数字が異なるのであるが、その会計監査を行うのは、上記のように、第三者委員会報告書で重大な疑念が生じる事実を指摘された新日本監査法人なのである。

しかも、東芝の財務部門のラインは、第三者委員会の指摘によって幹部が引責辞任に追い込まれており、財務報告を適切に行う組織体制が維持できているか否かすら疑問である。

このような状況で、8月末に提出が予定されている有価証券報告書で、2015年3月期決算の数字が開示されるのである。重要な評価・判断を含む決算内容を誰が信用するであろうか。