新しい職場で大変ですね。ミスをしないようにと緊張して、余計にミスを起こしているということはないでしょうか。

緊張を解くための3つのポイントを押さえておきましょう。

まず1つ目は、人間は多かれ少なかれ、必ずミスをする動物だということです。ミスをするのはむしろ健全な証拠。自分を責めすぎてはいけません。ミスが起きる前提で、仕事の仕組みをつくっておくことのほうが大事です。

たとえば、大事な仕事なら、隣の人や上司に頼んでチェックしてもらう。「ここの部分だけ見てください」と。目は2つより4つのほうが、ミスは減らせます。僕は「フォーアイズ」と呼んでいます。

――逆にミスを見つけられて怒られそうな気が……。

ミスを隠そうとするから、余計にミスが起こるのです。私の会社では、問題が起きたら、まず「ギャーッ」と叫べと言っています。叫んだら皆が集まってきて「どうしたのだ?」となるので、ミスが直るのです。原因や責任は、後で考えればいい。

大事なことは、ギャーッと叫べる雰囲気をつくることです。最初から「誰の責任だ!」と怒鳴るような上司では、ミスが隠されて、事態はますます悪くなります。個人ではどうしようもないことですが。

2つ目は、あなたがミスをすることは、ミスをする前に決まっているということです。

――どういう意味ですか?

どんなときにミスをするかといえば、仕事に集中していないときです。だからまず集中力を高めるために、よく食べ、よく寝て、常に健康な状態をキープする。恋人が最近冷たいとか、職場の人間関係がうまくいっていないなどの悩みがあれば、それらを先に解決する。

さらに、人間の集中力はそもそも何時間も続くものではない。学者によると、集中力が続くのは2時間が限度です。できれば2時間に1回くらいは休憩を取り、リフレッシュして仕事に取り組むといいのではないですか。深呼吸をする、トイレに行く、お茶を飲むなどがいいと思います。

3つ目は、あなたの仕事のミスは、おそらく大したことがないということです。

本当に恐ろしいのは、ミス自体より、ミスを利用されるということです。歴史を見れば、誰かのちょっとしたミスが利用されて、国と国との戦争が起きたりする。そういう例は山ほどあります。

――たしかに、私がミスしても戦争は起きませんが、気をつけないと。

ミスを利用されないよう、普段から人間関係に気を配っておくことのほうが大事です。それができていれば、仕事上のミスの多くは、実は大したことはないのです。

少しは気がラクになりましたか。

Answer:ミスをしないことばかり考えるから、ミスが起きるのです

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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