新入社員が、生命保険で備えておくべき最大のリスクは何だと思いますか?
――いちばん大きいものは、やはり「死亡」でしょうか。交通事故などに遭う可能性もゼロではないですから。
そうですね。ただ、保険に入っていても、残念ながら、あなたを生き返らせることはできません。
――それはそうですね。でも保険金をもらえるほうが、もらえないよりはいいのではないですか?
もちろん、お金をもらって困る人はいません。ただ、あなたは独身ですよね? 独身の方の保険金の受取人は通常は、親になりますが、保険に入っていなかったら、あなたの親は金銭的に困るでしょうか?
――僕の稼ぎで食べていたわけではないですから、たぶん困らないでしょうね。
なら、それは保険で備えるべきリスクとは言えません。若い人にとって最大のリスクは、事故や病気で長期間「働けなくなること」です。
――なるほど。今さら、親のスネは齧れませんから。すると医療保険ですか?
医療保険は短期の備えです。入院でお金が出ると言っても、最近は入院日数が短くなる傾向がありますし、日本の健康保険には「高額療養費制度」があって、1カ月にかかる医療費の上限は、8万~9万円程度です。それを理解したうえで、入ってください。
――それくらいであれば、貯金があれば自分で払えなくはないですね。
むしろ、保険でカバーしておいたほうがいいのは、退院後、長期に自宅療養などが必要で、働けない場合。働けない間も衣食住などの生活コストが発生します。
例えば完治するまで毎月、10万~20万円程度支給されるような保険を、各社が「就業不能保険」や「所得補償保険」などの名称で販売していますので、そうした保険に入るのがいいと思います。
この種の商品は、アメリカやドイツでは、「ディサビリティ保険」(disability insurance)と呼ばれ、保険の主力商品の1つです。
――保険料はどのぐらいですか?
月々の生命保険料は、手取り給与の3~5%の範囲内におさめるのがいいと言われていますので、その範囲内で選んでみてはいかがでしょうか。
――どんな状態になったら保険金を受け取れるんですか。
会社によって異なりますが、基本的には医者が「働いてはいけません」と言ったときです。医者は患者のためにベストアドバイスを行う責務があるので、医者の判断を尊重する仕組みになっているのです。
Answer:死亡や入院よりも自宅療養のリスクに備えましょう
ライフネット生命保険会長兼CEO
1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。