松浦さんが、時間の使い方を再考する際の柱となったのが、同社のD-SMARTである。これは、全社員がパソコンを通じて内容を共有できるスケジュール表だ。

ここを、どんな優先順位で埋めていくのだろうか。

「まず、(1)ご契約以降のお客様への住宅の引き渡しや地鎮祭。これは絶対の最優先です。次に、(2)月初に出る行動予定に沿って、拠点長会議や全体会議など社内・店内行事を入れ、(3)朝礼・夕礼で行うことや、自分でやっていこうと考えていることを記入します」

すると、わずかずつでもすき間時間があることが見えてくる。そこを、(4)新規顧客への電話でのアポ入れや、翌日の商談のための資料作成といった“探客”に使う。探客とは、誤解を恐れずにいえば将来の成約のための“種まき”だ。

「対象は主に展示場でコンタクトした来場者。それだけでも、新規客とのコンタクト数が格段に増えました」

当然、顧客の突然の訪問といったイレギュラーな予定も入るから、スケジュール表のメンテナンスは欠かせない。

このシステムでは、ほかの社員のスケジュール表にもメッセージを書き込めるから、上司や設計担当のスケジュール表で相手の空き時間を見つけ、時間を割いてもらうよう要請することもできる。

「ときには、私のスケジュール表を見た上司から、あのお客様を訪問するなら、この点に留意しろというようなアドバイスの電話がかかってくることもありますよ」

営業には心強いサポートシステムだと松浦さんはいう。かつて先を見るのもせいぜい1週間、場当たり的だった頃とは大きく変わり、顧客への対処を長期的なスタンスで考えるようになった。設計や経理などとの連携もスムーズになり、仕事を振り分けて、プラスαの自分の仕事時間を生み出すのにも役立っている。

「20代の頃は、個人がプレーヤーとして特化していけば、何でも課題解決ができると思っていました。しかし、今は認識がまったく変わりました」

個人よりチームで。組織力を生かしたほうが、はるかに課題解決の幅は広がるという。