世代交代は大丈夫か

この4年間で女子サッカーを取り巻く環境は改善された。高校を中心にチーム数が増え、13年から実施されている「Jリーグクラブライセンス制度」では必須ではないが、Jリーグのクラブは「女子チームを保有していること」との基準を設けている。

ただ男子と比べると、まだ環境は厳しい。とはいえ、なでしこリーグの観客動員数は2011年をピークとし、減少傾向ながらも、ラグビーなどの他の女子スポーツから見れば、競技環境は羨ましい限りだ。ちなみに女子ラグビーの競技人口は3000人程度。クラブ数も少なく、プロ選手などほとんどいない。

JFAはまた、「なでしこジャパン海外強化指定選手制度」を設け、選手の海外挑戦を支援するため、強化費として選手に補助金を出している。今回のW杯のなでしこジャパンのうち、海外クラブ所属選手は宇津木瑠美(フランス・モンペリエ)、大儀見優季(ドイツ・ウォルフスブルク)ら6人を数えた。

JFA関係者は言う。「なでしこの活躍は、脚光を浴びない時代から、地道に強化して、トレセン制度などの効果を加えたからでしょ。4年前のW杯の時との違いは、海外でのプレー経験者が増えたことです」と。

だからだろう、なでしこジャパンは巧かった。決勝で米国に完敗したけれど、それまではよく戦った。勝負強かった。36歳の澤穂希(INAC神戸)に象徴される通り、だれもが、ひたむきであきらめなかった。

もっとも、なでしこジャパンには「まだ環境が未整備」との選手の声もある。スタメンは4年前とほとんど変わらなかった。世代交代は大丈夫なのか。来年のリオデジャネイロ五輪のアジア予選において、日本はこのW杯でベスト8入りした中国、豪州、さらには韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北挑戦)などとわずか2つの五輪切符を争わないといけない。

「ブームではなく、文化にしたい」と、主将の宮間あや(岡山湯郷)は会見で繰り返した。世代交代を図りながら、どんなチームをつくっていくのか。どうやって女子サッカーの未来を切り開いていくのか。

やはり、なでしこジャパンは一日にして成らず、なのである。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。

 

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