失敗を恐れず挑戦するユダヤ人の精神は、数字にも表れている。イスラエルはスタートアップ大国と言われ、ベンチャー企業が続々と誕生している。国民1人あたりのベンチャー投資額は、アメリカの2.5倍、ヨーロッパの30倍以上だ(08年)。

これまで見てきたように、ユダヤ人経営者が成功してきた背景には、ユダヤの宗教教育や民族の歴史があった。だとすると、同じ宗教や歴史を共有していない私たち日本人が、ユダヤ人のものの考え方を身につけるのは難しいことのように思える。しかし石角さんは、日本人の中にもユダヤ的な経営者はいるという。

「堀江貴文さんは、遠慮を知らない物言いがユダヤ人そっくり。常識にとらわれないし、刑務所に入ってゼロになったこともユダヤ的です。また、総務省と戦っている孫正義さんもそうですね。ボーダフォンの買収時はまわりからいろいろ言われたと思いますが、雑音を気にせず、こんどはスプリントまで買った。まわりに左右されないという点に、ユダヤ的なものを感じます」

堀江貴文氏も孫正義氏も、ユダヤと縁があるわけではないだろう。宗教や民族はユダヤ的発想の必須条件ではない。誰の中にも、多かれ少なかれ、「ユダヤ的なもの」は存在する。それを常識で押しつぶさずに、いかに伸ばしていくことができるか。それが、日本人が弱いとされるビジネスのプラットフォームづくりや、ベンチャー企業育成を強化し、金融・財政政策に依存しない経済成長を実現するための鍵ではないだろうか。

※写真は、ユダヤ人家庭に育ったとされる経営者たち。(実際にユダヤ人であるかどうかは、ユダヤ人の定義が、ユダヤ教を信仰するかどうかという心の中の問題であるため、本人が積極的に公開しない限りは確認が難しい場合もある

(立花直子=取材協力 時事通信社=写真 Getty Images=写真)
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