◎「サーバント・リーダー」はこう行動した!
これは無印良品を展開する良品計画が01年に赤字転落し、松井忠三現会長が社長に就任したときのケース。社長就任の翌年に松井会長は早くも増収増益を達成し、V字回復を果たした。
社長に就任すると松井会長はまず、全国すべての店舗を行脚し、現場を見て、店長と話し合い、夜は共に飲んで現場の従業員と交流をはかった。
そこから松井会長は、組織文化に問題があると考えた。業務の標準化がなされず個人プレーが横行すると業務効率が悪くなり、店舗や従業員によって業務のバラツキが生じて、過度に個人に負担が集中する問題も生じるからだ。
そして取り組んだのが業務全般の「概念化」である。仕組みがあれば作業の無駄がなくなり、誰でもその仕事を担当できるようになる人材育成上のメリットもある。仕組みどおり頑張れば、みんな成果を出せるようにもなる。そこで店舗業務を網羅した「MUJIGRAMU」と本社で使用する「業務基準書」というマニュアルを構築した。これらは現場で発見された問題点や改善点を毎月更新し、ブラッシュアップされているのが特徴だ。
過剰在庫の問題については、販売情報管理のフォーマットを使用させるとともに、商品開発や仕入れの仕組みを見直しコンピュータで管理することで大幅な削減に成功した。
松井会長は現場社員の声の「傾聴」による解決からコンセプトを概念化し、徹底的に実行していった。これは従来の企業文化の否定でもあるが、それを外部ではなくセゾングループ出身の経営者が自ら実行した点が特筆されよう。
概念化による問題の解決は、問題の原因を「人災」ととらえるアプローチとは結果が大きく異なる。問題を個人のせいにすると「その担当者を代えればいい」という発想で終わってしまい、根本的な問題の解決にはつながらないのである。
良品計画の概念化は、従業員の仕事を楽にしながら成果を出せるようにし、人材育成にも寄与しているのだ。