クロスボーダーでのM&A戦略
さらに、ここへきて当社でお手伝いするなかに急激に、国境を超えたクロスボーダーでのM&Aの需要が増えつつあります。関連してくるのは、ほとんどのケースで、中国、バングラディシュ、そしてシンガポール、タイ、ベトナム、インドネシアといったASEANの諸国です。
海外に進出がからんだM&Aのメリットを、私は次の4つだと考えます。
(1) コストを安く抑えられる。
(2) 安全に展開できる。
(3) 時間が短縮できる。
(4) 文化の壁を越えられる。
最後に、イギリスの著名な雑誌「エコノミスト」による経済予測を紹介しましょう。「エコノミスト」によると、将来の世界のGDPに占める各地域の割合は図のようになっています。
この予測によると、アジアの国々は、いまから15年後には世界のGDPの約40%を担い、35年後には世界の約半分を占めることになります。一方で、北アメリカ、西ヨーロッパ、日本の割合は相対的に減っていきます。
しかし見方を変えれば、日本は、今後経済的に最も重要になるアジア地域に一番近い先進国ということです。私は毎年数回、アメリカを訪問していますが、アメリカの投資銀行家と話をしていると、次のように言われ、うらやましがられます。
「日本は現在最も成長が高い中国の隣国である。さらに、今後の成長が最も期待されるASEANに最も近い先進国である。これほど有利なことはない。アメリカは何といってもアジアからは遠いし、文化も異なる」
PMIは、買い手企業と譲渡企業がビジネスパートナーとしてチームを組み、最高のパフォーマンスをあげていくためのものです。国境を越えたM&Aにおいても、ぜひ統合のためのマネジメントと、その重要性を認識して取り組んでほしいと願います。
※『M&Aを成功に導くPMI』事例に学ぶ経営統合のマネジメント(プレジデント社刊)より