中途半端では業績は最悪になる

シャープが業績不振に苦しんでいます。2015年3月期決算では2223億円の最終赤字に転落。決算発表では、再建に向けた中期経営計画と希望退職の実施を打ち出しましたが、株価は大幅に下落しました。

筆者(入山章栄氏)も今回の再建策が十分とは思えません。重要な点は、希望退職、いわゆるリストラクチャリング(以下リストラ)の、(1)規模と、(2)連動すべき戦略の「中途半端さ」です。

15年3月末現在、シャープの従業員数は国内外で約5万人です。今回の再建策では「(9月末までに)国内で3500人規模の希望退職を実施、年度末までにグローバルで約10%程度の人員削減を目指し、新たな事業構造に見合ったスリムな人員体制を実現します(※1)」としています。ここで考えたいのが、「企業の収益性は『スリムな人員体制』によって回復できるのか」ということです。

経営学では、企業の人員削減の収益性への効果について、様々な統計分析が行われてきました。特に近年多くの研究では、「人員削減が企業収益にプラス効果を及ぼすのは、一定の条件を満たしたときに限る」という主張が強くなっています。つまり条件を満たさなければ、人員削減は収益性にむしろマイナスなのです。ここでは代表的な2つの研究から、その条件を探ってみましょう。