しかし、強がる気持ちがお客様を引かせてしまい、失敗することもしばしば。あるお客様から「もっと自然体でいいんじゃないの」と指摘されて、ようやく男性と競おうとしなくてもいいのだと気づき、ずいぶん気が楽になったことを覚えています。
ただ、男性と競わないことと、男性に媚びることは違うと思います。たとえば「私、何にもわからないんですぅ」と甘えて語尾を伸ばす話し方は、男性に媚びているという印象を与えて逆効果。女性らしさを意識しつつも、ビジネスパーソンとしてのスマートさを感じる話し方、つまり“かしこカワイイ”話し方を目指すべきです。
イメージしてほしいのは、吉永小百合さんの話し方です。吉永さんは低音でゆっくりと話しますが、この話し方はエグゼクティブ層にどんぴしゃり。以前、外資系のコールセンターでトップの成績を収めている女性に話を伺ったことがありますが、彼女の話し方も低音でゆっくりでした。知的な女性が物腰柔らかく話そうとすると、自然にあのような話し方になるのでしょう。
話す中身についてはケースバイケースですが、一般論でいうと、最初はスポーツの話題が最適でしょう。政治や経済の話題も悪くありませんが、それらを話題にする場合、こちらからは質問にとどめ、相手に話してもらうようにしたほうが無難です。
お客様からお酒に誘われたときの断り方も、営業女子の腕の見せどころです。地方に行くと、営業女子を接待要員扱いする昭和な会社がいまだに多く残っています。冷たく断ると関係が壊れることもあるので、「すいません。会社のルールで上司に同席してもらわないといけないのですが、一緒によろしいですか」と、会社や男性上司を理由に使ってください。
相手の立場やメンツを尊重しつつ、自分の望む方向に話をうまく導いていく。それが、かしこカワイイ営業女子の話し方なのです。
1958年生まれ。大阪大学経済学部卒UCLAでMBA取得。日産自動車に入社後、イオンフォレスト社長、スターバックスコーヒーCEOなど歴任。現在はリーダーシップコンサルティング代表。
太田彩子(おおた・あやこ)
1975年生まれ。早稲田大学法学部卒。大学在学中に出産、リクルート勤務時代に3度MVP表彰を受ける。2006年にベレフェクトを設立し、社長に。(社)営業部女子課の会代表理事も務める。