大阪市では、職員厚遇問題などで全国的にも注目を集めて以降、官から民への流れを活用し、職員数の削減や財政の健全化などの市政改革で確実に成果を挙げている。しかし、橋下市長は、地下鉄もバスも水道も下水道も、幼稚園・保育園も民営化するという。それぞれの事業や利用者の状況を全く考えずにゴールありきで進めるため、まともに議論することすら難しい。民営化すればすべてがよくなるというのは机上の空論だ。オールオアナッシングではなく、市民のためにどんな改革が必要なのかを冷静に議論すべきだ。私たち自民党は、賛成できる部分には賛成しているが、メディアは橋下市長との対立している部分しかとりあげず、また橋下市長も議会との対立を演出している部分がある。

橋下市長に対しスケジュールに無理があると指摘すると、「わかりました、じゃあ合わせますよ」と口では言うのだが、スケジュールが変更されないばかりか、12月に否決された案件を、また否決されることがわかっていながら3月にまた出してくるような有り様だ。これもメディアの注目を集める橋下式のPR手法なのだろう。

住民投票の投票日が迫る中、フワッとした印象操作に乗せられて橋下市長を妄信している人にはどんな言葉を投げかけても伝わらないのが現状だ。これまでに、公募区長、公募校長のセクハラ、パワハラ問題の頻発、自らが任命した大阪府教育長の辞任、市民サービス(敬老パス、生涯学習ルーム)の切り捨て、最近では上西小百合衆議院議員の問題など、橋下市長が生み出した負の遺産は枚挙にいとまがないが「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということをよくわかっているのだろう。そのときだけメディアの前で怒ってみせることで、橋下市長を信じてしまう人がいるのは残念なことだ。目下、冷静に大阪市の未来を考えられる人たちに訴えかけていくことを心掛けているつもりだ。

今回の5月17日の住民投票は、特別区設置について賛成/反対を問うものであるが、実際には、大阪維新の会のみで作成した協定書についての賛否で、この住民投票が可決すれば、橋下市長に白紙委任状を出すに等しいことになる。橋下市長が「現状のままでいいのか、変えなくていいのか」という二者択一で迫るなら、我々は「特別区設置で市民が被る不利益とは何か。真に変えるべき点とは何か」について、残された時間で訴えていきたい。

(渡瀬裕哉=構成 熊谷武二=撮影)
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