性ホルモン活性化で認知症の防止も
ところで性に関心を持つと、なぜ、アンチエージングにつながるのか。
虎ノ門・日比谷クリニック名誉院長の山中秀男氏が解説する。
「異性に関心を持てば、性ホルモンが活発に出るようになります。このホルモンは、単に男らしさや女らしさをつくるだけではなく、女性の更年期障害の例を見てもわかるように、その人の体調にも大きな影響を与えるのです。恋をするときれいになるのは、性ホルモンが皮膚の色つやをよくする副腎皮質ホルモンを刺激するからなんです」
さらに山中氏は、脳細胞への影響にも注目する。
「セックスで大事なのは挿入や射精ではなく、満足感だと考えています。喜びや充足感こそがベータエンドロフィンという満足物質を生み、これが脳内のストレスホルモンを駆逐し、やる気の源となるドーパミンやセロトニンを刺激します。このため脳内神経伝達物質をつくる脳細胞が活性化するので、認知症の防止も期待できるのです」
実際、性生活の旺盛な人ほど長寿で、いつまでも若々しい傾向があるという。
そもそも恋やセックスをはじめ生きるための総合的男子力の源になっているのが、睾丸でつくられる男性ホルモンのテストステロンなのだが、高齢者の性に詳しい日本メンズヘルス医学会理事長で札幌医科大学名誉教授の熊本悦明氏は、「“恋愛と性”の土俵に上がり続けるには、テストステロンの低下が著しくなる50歳を過ぎてもそれを維持することができてこそなんです」と前置きして次のように指摘する。
「中高年にとって、子孫を残し、生命を次の世代に伝えるという『生殖としての性』の役割が終わった後の約30年をどう生きるかが大事になる。なかでも“恋愛と性”は生きていることを強く実感させ、高齢者になればさらに強くなる。そのためにはテストステロンの低下を補うホルモン治療が有効ですが、日常生活の心がけでも増やせます。ストレスは睾丸を刺激するホルモンを減らす原因でもあるのでなるべく回避したり、気持ちの持ち方で解消するのが効果的です。交感神経の興奮でストレスがかからないよう、運動や十分な睡眠によって副交感神経の働きを優位にすることが重要です」
夢のある明るい熟年期のための愛と性のあり方を見つめ、“スキンシップとしての性”を認識することで、楽しい人生のセカンドステージの扉は開かれるだろう。