業績を伸ばすために、競合他社との価格競争に陥ってはいないか。高価格帯でもヒットを生み出す企業は何をやっているのか。大企業から中小企業まで、4社の取材で法則と共通点が明らかに!
主に北海道、東北地方にワークショップ(作業用品店)チェーン「プロノ」を36店舗展開する「ハミューレ」。その特徴は自社開発のオリジナル商品がメーカー品より総じて価格が高いことだ。
例えば、建築業などのプロ顧客用のカッパの売れ筋は上下で3000~4000円台だが、同社の「クールレイン」は6458円。高めでも機能性はアウトドアショップに並ぶ2万~4万円の高級品と遜色ないため、ヒット商品に。同社のカッパ分野で売り上げ第2位、一般客が多い楽天市場でもレインウエア部門で上位にランクされる。業界最大手W社は店舗数こそ20倍だが、1店舗あたり売上高はハミューレのほうが2倍多い。その要因の1つ、2割ほど高い客単価に貢献するのがオリジナル商品だ。プロ顧客の支持に加え、一般客にも利用が広がり、売上高は店舗数拡大とともに5年で倍増した。
クールレインはなぜ、アウトドア高級品並みの機能を持つのか。カッパの最大の難点は防水性がもたらす蒸れだ。高級品に使われる素材ゴアテックスは透湿性抜群だが高額。そこで1ランク下の素材を使い、構造面の工夫で性能を補った。普通は切り込みを入れない部分に縫製工程を増やしてでも通気孔を複数つける。社員が試作品を着て実験台になり、倉庫で暖房を焚きながら蒸れ具合を確かめ、最後まで蒸れが残った肩部分にはウレタン材を入れて通気を改善。極限まで修正を重ねた。商品開発は通常、価格設定が先にありきだが、ハミューレが特異なのは、自社開発で価格から入らないことだ。取締役開発部長の今憲行さんが話す。
「うちはお客様の困り事を解決するため、ひたすら機能を高める。価格はあとからついてくることが多いのです」