小宮一慶氏が分析・解説

せっかく引き出しにインプットした情報も、そのままでは単なる情報にすぎない。そこで仮説検証を通して、一つひとつ点として存在する情報をつないで線とする。次に、その線と線を結んで面とする。さらに、その面と面を組み合わせれば立体になる。そこで高次元のひらめきが生まれてくる。

桜井氏の「システム思考」は、そんな高次元のひらめきの一種といえる。リコーが扱うOA機器は単にコピーやファクスをするための機械ではない。その本質を追求していくと「情報処理のための道具」に突き当たる。するとユーザーの情報処理の生産性を上げようという発想が生まれ、立体的なビジネス展開が可能になったのだ。

P・F・ドラッカーの『マネジメント』に「高級車キャデラックが競っているものは宝石やミンクのコート」という話が出てくる。キャデラックのオーナーは、単なる移動の手段が欲しいわけではなく、最高級車に乗っているステータスを得たいのだ。一方、奥さんは奥さんで、高価な装飾品を身につけることでステータスを誇示したい。

自動車ひとつ取っても、関心の当て方によって、予想もしなかった価値観や、消費者のニーズが見えてくる。当然、それにともなって斬新な売り方のアイデアも出てくる。物事を俯瞰してみたり、真逆から見るのも手だ。

小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶 
1957年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現職。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。
(小宮一慶=総括、分析・解説)
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