給与を伸ばすには3つの方法がある。ひとつは自分が出世することだ。残りの2つは、会社が成長するか、厚遇の会社に移るか。必要なことは大局観をもったキャリアづくりだ。会社頼みでは、必ず行き詰まる。

塩野 誠さんの回答
ランキングは無意味。狙うなら「規制業種」

20年後、学生時代の友人のなかで、誰よりも高い給料が欲しい。そんな人は、平均年収が高い業界の一番入りやすい会社を狙うのがいいでしょう。たとえば外資系の生命保険会社では、敏腕営業マンの収入は天井知らずです。一方、コピー機のセールスマンでは上限がある。これは個人のスキルや能力ではなく、業種ごとの収益構造に左右されます。

それでは平均年収が高い業界とはどこでしょうか。それは外部からの参入がない「規制業種」です。生保をはじめとする金融業界は典型的な規制業種。通信や放送、医療も規制に守られています。広い意味では公務員もそうです。これに対し、小売りや外食はつねに新規参入にさらされるため、平均年収が低くなります。

毎年、「就職人気ランキング」が発表されますが、これは学生の勝手なイメージに過ぎません。ところが、就職活動でこの順位に左右される人がいます。給与の高さという点では、それはずいぶん遠回りな選択です。

入社した会社が成長して、待遇がよくなることもあるでしょう。どの業種、どの企業が伸びるかを予測するのは困難ですが、マクロな視点から確実にいえることもあります。たとえば少子高齢化です。これは乳幼児向けのサービスより、高齢者向けのサービスのほうが市場拡大が望めることを示しています。また世界的に不足が指摘されている飲料水に関わるビジネスも有望でしょう。

約20年前、ドラッカーは『ポスト資本主義社会』で、これからは知識だけが意味ある資源になると論じ、知識資本主義の到来を予測しました。総合商社や化学メーカーなどが、商売の形態を変えて生き残ってきたように、情報とカネとヒトがあれば、どんな企業にも成長の可能性があります。反対に規制業種のように、「これしかできない」という企業はトレンドの変化に弱い。平均年収は高いのですが、同時に規制緩和というリスクには注意が必要です。 

塩野 誠(しおの・まこと)
経営共創基盤(IGPI)パートナー/マネージングディレクター。1975年生まれ。米国ワシントン大学ロースクール法学修士。ライブドア証券副社長などを務め、現職。著書に『20代のための「キャリア」と「仕事」入門』など。
(プレジデント編集部=構成・撮影)
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