クルマづくりのプロセスをゼロから見直す
マツダが元気を取り戻した裏には、地道なブランド向上活動があったといっていい。その契機となったのが、2002年に打ち出した「Zoom-Zoom」という新ブランド戦略だ。「マツダの車は単なる移動手段ではなく、乗るとわくわくする」と訴え、マツダらしい走りを追求しデザインに磨きをかけることにした。
それまでのマツダは、地力に劣っていたことから販売台数を稼ぐために安売りに走り、その結果、中古車価格が崩れてブランド価値が低下、また安売りに頼るという悪循環で財務体質は大きく悪化、たびたび経営危機を招く結果となっていた。
そこで、「Zoom-Zoom」戦略を打ち出すと同時に安売りをやめたわけだが、最初のうちはなかなかうまくいかなかった。というのも、開発資金が少なかったため、マツダらしい新型車を出せなかったからだ。しかも、その後にリーマンショックや東日本大震災が起こり、再び赤字企業に転落した。
そんな中でも、マツダは安売りをせずにブランド価値の維持に努めた。と同時に、円高にも負けない体質をつくるため、クルマづくりのプロセスをゼロから見直す「モノ造り革新」に取り組んだ。そして、独自の次世代技術である「SKYACTIV」技術を開発し、2012年にそれを搭載したCX-5を発表。このクルマがヒットするとともに「これまでのマツダ車とちょっと違う」と話題になった。
その後、アテンザ、アクセラ、デミオと次々に投入し、マツダのブランドイメージが大きく変わった。以前のような“安売り”イメージを持つ人が少なくなり、若者の間では「走りに特徴があり、デザインがカッコいい」と好印象を持つ人が増えている。
しかし、マツダが主戦場とするのは、最も競争が激しい中小型の乗用車市場だ。その中で、マツダがいま目指しているのは、大衆車ながらプレミアム性があり、高収益を確保するブランド。そのためには、ここで安心することは許されない。言うまでもなく、マツダならではのクルマづくりに磨きをかけ、ブランド向上のためのさらなる努力が必要だ。