「CS(顧客満足)とよくいわれるが、私はUS、利用者満足のユーザーサティスファクションを最優先すべきだと考えている。コミーの鏡を直接買ってくれる顧客の多くは、設備関係の販売代理店や施工会社で、必ずしも鏡を実際に使っているユーザーではない。ユーザーにとって本当に役立つ製品でなければ、市場では生き残れない。まず、ユーザーに製品に対する意見を聞いて、アイデアに生かすことが肝心だ」

ただし、コミーにとって、ユーザーを把握することは簡単ではない。そこで、製品には「ご愛用者登録カード」を添付、ユーザーに購入目的や製品の設置場所などを記入したうえで、返信してもらっている。さらに年1~2回、全社員による「一斉US訪問」を制度化した。たとえば正社員とパート社員が2人1組となり、10件くらいの既存ユーザーを回る。製品の使用状況を写真撮影したり、製品の長所や短所を聞き取りしたりして、レポートにまとめ、社内で発表する徹底ぶりだ。

こうして集めたユーザー情報は、製品の開発や改良にフィードバックする。ATMの後方確認ミラーについて、実験導入した金融機関で調査した結果、何のためについているのかわかっていないATMの利用者がいることが判明した。そこで、鏡に「後方確認ミラー」の名称を印刷したところ、利用者に広く活用されるようになり、ほかの金融機関にも拡大した。

「1000人に声をかけて、1人しか製品を買わなかったとしよう。私なら、その1人に買った理由を聞く。売れない理由は、値段が高い、デザインが悪いなど、いくらでも出てくる。しかし、1人でも購入の決断をしたわけだ。そこを追求したほうが次につながる」

回転鏡の経験を教訓に、売れた理由にどこまでもこだわる小宮山社長。今後もユーザーの声を生かし、ユニークな製品を作り続けていくはずだ。

(加々美義人=撮影)
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