打倒中央、打倒共産党一党独裁

2つの超大国の行方は(中国の習近平国家主席とアメリカのオバマ大統領)。

トラやハエやキツネを追い込む習近平政権の戦いがどのような着地の仕方をするのかはわからない。習近平の側近は今年3月までにこのクリーンアップを終わらせたいと語っているが、そう簡単に着地できるとも思えない。少なくとも、習近平の圧勝に終わって、「これで中国はクリーンになりました。習近平こそ現代の毛沢東です」という結果にはならないと思う。

習近平自身も胸に手を当ててみれば一族郎党すべてクリーン、というわけにはいかないのだろうから、やりすぎれば自らに累が及ぶ可能性もある。狩られる側も命懸けだから、反撃して習近平の命を狙うことだってありうるだろう。

バブルが膨らんだ経済は何とかハンドリングして、どこかで軟着陸せざるをえない(あるいはハードランディングによる大クラッシュもありえなくはない)。しかし、腐敗菌に侵されて毒が回った体はそう簡単に元には戻らない。仮に腐敗を一掃できたとしても、人材が全国的にもぬけの殻になった状況で、まともな政治ができるとは思えない。

土地転がしとキックバックの仕組みが中国経済を大発展させてきたことは間違いない。その仕組みがなくなれば、中国経済のダイナミズムは失われる。すでに先行指標に表れていて、裏金のロンダリングに使われてきたマカオ経済は昨年からマイナス成長に陥り、マカオのマンション群は“鬼城(ゴーストタウン)”と化している。

中国が普通の新興国になって、13億の人口の大半が貧乏のままということになったら、これはかなり大変だ。この勢いなら皆で金持ちになれると思っていたのに、期待を裏切られた国民の不満はいやがうえにも高まる。そのエネルギーは当然、打倒中央、打倒共産党一党独裁に向かいやすい。その時点では、民衆のエネルギーを反米反日に転嫁させるだけの余裕は共産党にはないだろう。

逆に「中央は頼りないから、自分たちだけでも」といって、アメリカや日本に擦り寄ってくる自治体エリアも出てくるのではないか。

民衆の一部が立ち上がれば、夜陰に乗じて新疆ウイグルやチベットでは独立に向けた動きが加速するかもしれない。特に新疆ウイグルは「イスラム国」に1000人くらい送り込んでいるそうで、中国当局は神経を尖らせている。

習近平の始めた戦いが現代のアヘン戦争となって、共産党一党独裁を崩壊に導き、国体さえ揺るがしかねない――。この中国リスクを世界は見通しておかなければならない。

(小川 剛=構成 AP/AFLO=写真)
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