現状に安住しては大改革できない!

ANAホールディングス社長
伊東信一郎氏

航空業界はいつも、ものすごいスピードでビジネス環境が変わっていきます。現在、その変化を先導しているのがLCC(Low Cost Carrier、格安航空会社)で、世界中ですごい勢いでシェアを伸ばしています。日本でも2012年からLCCが本格的に事業を開始しました。国内でのシェアはまだ5%ほどしかありませんが、欧州やアジアでは30%から40%のシェアを獲得。今後、日本でもLCCがシェアを伸ばしていくことは十分考えられます。

全日本空輸(ANA)は、国際線でLCCと同じような路線を持ち、競争関係にあります。ANAはフルサービスキャリアということをしっかり打ち出し、LCCにないサービスを提供して、お客さまに選ばれる航空会社になっていかなければなりません。

また航空業界は、戦争やテロ、災害、疫病などといったイベントリスクの影響を受けやすい。そうしたリスクに負けない企業体力をつけていかなければなりません。グローバルで見ると、航空会社が経営破たんに追い込まれたり、経営不振に陥ったりすることは珍しくありません。こうした厳しいビジネス環境のなかで、安全を守りながらどうやって成長していくのか。私は“人”、つまり社員が大きなカギを握っていると考えています。

今年の年頭のあいさつで、「現状に安住してはいけない」と全社員に伝えました。前例や常識にとらわれず、新たな発想を持って大改革を進めていく必要があると話しました。

改革を実行し、ANAグループの新しい時代をつくっていくのは社員です。地域の活性化を進めるうえで重要だと言われる「よそ者、若者、変わり者」の存在が、必要だと考えています。

よそ者は、今なら外国人社員などが当てはまるでしょう。彼らの視点は日本人社員では気がつかないところにまで及び、既存のビジネスに変化を与えてくれるに違いありません。若者には常識を突き破るようなパワーがみなぎっています。改革を推し進めるには若者たちの力が必要です。変わり者も重要です。よそ者と同じように、一般の人では思いつきもしない発想を持って仕事に取り組むため、改革を断行してくれるはずです。