コミュニケーションは、多様な要素の複合体(発信側だけでも「伝え手」「伝える中身」「伝え方」が関係している)である。経営者の話を分析していくと、いかなるときにも有効な「普遍原理」のようなものが確かに存在している。ここでは、それぞれの経営者が見出した「伝え方」を考察してみよう。
血のしょんべん垂らして働く姿を見せる意味
うちの会社は個性派の集団で、いわば動物園みたいなものですよ。そんな個性豊かな従業員がついてきてくれるのも、僕が想像を絶するくらい働いたからだろうね。僕は本部で夜中まで仕事をして、それから店に行って、朝まで掃除をしたことが数えきれんほどある。朝になると、店の鍋で湯を沸かして体を拭いた。そんなこと、なんぼでもあるよ。血の汗、血のしょんべんを流しながら働いた。うちのみんなはそれを見てる。だから、会社はまとまった。
結局、飲食業は人なんですよ。気持ちのいい接客をし、安くておいしい料理をスピーディに提供するには従業員が燃えていなくてはならない。従業員が満足して働いていないとお客さんへのサービスもできないんです。そのために僕は従業員を大切にする。報奨や成果の還元だけでなく、僕自らが手本を示して、仕事をしています。
僕はね、リーダーは指導者でなくてはならんと思っている。支配者でも管理者でもいけない。
上にいる者が支配者だと従業員は怖がって、意見も言わなくなる。管理者なら「こいつが言っていることだけをやればいい」となる。
世の中はそんなに甘いもんじゃない。部下を怒鳴ったり、数字を追求するだけじゃ商売はうまいこといきません。上の者が血のしょんべん垂らして働いてるから、それを見てる従業員も頑張る。商売は人です。僕の目標は王将の仕事を通して人を残すことです。
(09年9月14日号 当時・社長 構成=野地秩嘉)