コミュニケーションは、多様な要素の複合体(発信側だけでも「伝え手」「伝える中身」「伝え方」が関係している)である。経営者の話を分析していくと、いかなるときにも有効な「普遍原理」のようなものが確かに存在している。ここでは、それぞれの経営者が見出した「伝え方」を考察してみよう。
他社の悪口は言わず顧客の背中を押す
他社の商品の悪口は言いません。その商品も選択肢に入れているお客様にとっては自分を否定された気分になりますからね。
自分の商品のよい点を語ればいいのです。その場合、カタログのデータを示して「ここが長所です」などと断定的に説明しても相手はピンときません。
自分も実際に利用してみて、こんなふうに感激しましたよと経験を伝えたほうがいい。説明の押し付けではなく、感性に訴えるほうがわかってもらえますね。
ここで決めたい、契約を取り付けたいと自分の側だけの都合で考えては駄目です。むしろお客様の重荷を取り除いてあげたいという気持ちで臨むこと。
お客様というのは、ほとんどが非常に迷っています。楽しいはずの買い物が、ときに重荷にさえなってしまう。そこでタイミングを見計らって背中をポンと押してさしあげるのです。結論を出してお客様にホッとしてもらいたい、という気持ちですね。
それにはお客様の気持ちを十分に感じ取る共感力が不可欠です。譬えれば、柔道のように相手の力を利用して呼吸を見計らって技を掛けるのによく似ていますね。
(08年9月29日号当時・社長 文=小山唯史)