街中でもスマホはほとんど使えず

さらに、「タイ・プラス・ワン」において想定されている効率的な工程分業を実現するためには、クロスボーダーの物流(ロジスティックス)コストや関税が引き下げられ、相当に低い水準にある必要がある。とりわけ、分業化された工程を担う各生産拠点間の物流を支える、輸送のための道路、港湾、空港、さらには、情報伝達のための情報通信技術(ICT)などのインフラストラクチャーが整備されていることも必要である。CLMV諸国においては、道路や鉄道の整備も十分ではない。過重量のトラックが走る道路では路面が凸凹状態であって、大袈裟な言い方であるが、揺れても問題のない衣類しか運べないともいわれている。また、港湾も大型船が寄港できない港湾もあり、沖合や他の港湾での積み替えを必要とするために輸送日数が多くなりがちである。さらに、ミャンマーの旧首都ヤンゴンでは、街中でもスマホがほとんど使えず、ジャンク・メールや仕事のメールから解放されたものの、連絡を取るのにとても苦労する経験をした。

このようにインフラストラクチャーがいまだ十分に整備されていないCLMV諸国では、共通して経済特別区(Special Economic Zone: SEZ)を設定して、その経済特別区に資源を集中させて、開発を進めている。経済特別区では、工業用地を造成するだけではなく、その経済特別区内において発電所建設による電力供給の確保、上下水道の整備、大型船が寄港可能な港湾の工事などを優先的に進めている。ミャンマーではティラワ経済特別区(ヤンゴンから23キロメートルに位置する)が日本政府とミャンマー政府との合意の下に日本(49%出資)とミャンマー(51%出資)の企業連合の合弁によって13年11月より開発が始まった。ヤンゴンでJETROヤンゴン事務所を訪れたときにも、日本企業向けのティラワ経済特別区見学会が催されていた。