走っていると「死」を考えます。極限まで走り抜き、自分の哲学や死に場所を探すのも悪くありません。人生の最後を感じるようになると、残された人生でやりたいことの優先順位が見えてきます。

「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るもの也。此の始末に困る人ならでは、艱難を共にして、国家の大業は成し得られぬなり」

知事が歩んだ失敗と復活の歴史
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知事が歩んだ失敗と復活の歴史

西郷隆盛が残した言葉です。名誉やカネなどに釣られない人間は厄介だが、そういう人間でなくては国づくりのような大業はなしえないということです。要するに、欲のないヤツが一番強い。

僕の場合、カネやオンナなど煩悩に対する欲望はすでに一回転してしまったところがあります(笑)。今はそういう欲を満たすこと自体が目的で生きていません。むしろ今の自分の原動力は、国を変えることとか地方のあり方を変えることにシフトしていて、そちらのほうが大きな快感と思えるようになりました。ランニング中に苦痛を乗り越えて恍惚状態に達する“ランナーズ・ハイ”ならぬ“ポリティシャンズ・ハイ”とでも言いましょうか。

大切なことは、煩悩は「適切に」処理しつつ(笑)、自分にとって生涯夢中になれるものを手に入れること。

僕にとっては、今、政治がそういう存在なのです。

(須藤靖貴=構成 吉次史成=撮影)