肥満と負債には、統計的に見て明らかな相関関係がある。私たち大阪大学の研究グループが2005年に行った全国アンケート調査が、それを裏付けた。住宅ローンを除いた「負債あり」と「負債なし」のグループを比べると、「あり」のほうが男女とも肥満者の比率が高いのだ。ちなみにここでいう肥満とは、体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割ったBMI(体格指数)が25以上のことである。
ではなぜ、このように負債者のほうが太っているのか。それは、肥満というのは経済学から見れば“借金”そのものだからだ。食べる楽しみを優先したことで背負った健康上の“負債”だと考えればいい。結果として、洋服が合わなくなったり、苦しいダイエットが必要になったり、将来の病気のリスクを背負い込むといった“利息”を支払うことになる。
いったいどんな人が“借金”をするのだろう。実は同じ財貨でも時間の開きがある場合には価値が違ってくる。例えば、いまもらえる5万円と、1年後に手に入る5万円のどちらを取るかといえば、誰しもきょうの5万円を選ぶだろう。現在の5万円に比べて、1年後の5万円は割り引いて考えるわけだ。経済学では、その割り引く割合を「時間割引率」と呼んでいる。
実際にこの割合は「100万円の受け取りを1年後まで待ってほしいといわれたら、何%の金利を要求しますか?」と尋ねることで測定できる。ちなみに、先のアンケートでの平均は1.16%だった。その数値が高い人ほど、せっかちで、辛抱強さがなく、将来の体形より目先のご馳走に目がくらんでしまう。当然、カロリーを摂りすぎて肥満になりやすいし、借金も繰り返す。