「後回し」傾向という自滅的な性質

なぜ太っている人ほど「借金体質」なのか
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なぜ太っている人ほど「借金体質」なのか

さらに問題なのは、同じ「辛抱強さ」でも、直近と遠い将来とで大きな差がある点である。遠い将来については辛抱強い計画ができるのに、目先の選択となると、急にせっかちになってしまうのだ。ダイエットの実行が1カ月先なら、「3カ月で10キログラム減量達成」など、かなりしんどい目標でも立てられるが、実行日の前日になると、何だかんだと理由をつけて「もう少し延ばしてもいいか……」と後回しにしてしまう。

こうした「後回し」の性質がダイエットを失敗させ肥満を増長させる大きな原因になる。それではダメだとわかっていても、目先の辛さを避ける。当然、肥満度は増すばかりだ。

肥満はいろんな意味で“リスク”につながる。重い成人病になれば、手術や入院費を覚悟しなければならない。その費用は日々の家計を圧迫することになる。多重債務者の多くが病気による収入の途絶がきっかけだ。

なるほど肥満は本人の選択を反映しているのだが、その選択が「後回し」傾向といった選択者の自滅的な性質に基づいているとすれば、こうした経済学的な肥満メカニズムの知識を歯止めにして、有効な対策を取らなければならない。その一つの方法が「コミットメント」である。要するに約束事で自分の手を縛って節制の「後回し」ができないようにしてしまうのだ。

たとえば、思い切ってきつめのズボンを買ってみたり、スポーツクラブの会員料を何カ月分も前払いするといった具合だ。仲間同士でBMIがいくつを超えたら罰金を払う「やせ我慢の会」を結成するのもいいだろう。同じ志を持った人たちとの約束なら実行力が増すはずだ。

(岡村繁雄=構成 熊谷武二=撮影)