電力会社が直面するガス導管利用の問題

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大手都市ガス3社が敬遠する法的分離

ガスの自由化は1995年の大規模工場向けを皮切りに始まり、小規模工場やビジネスホテル、病院といった大口の領域にまで進んでいる。そして、その大口の分野にはすでに強力な新規参入者が顔を揃えている。

筆頭格が東電。千葉にある袖ヶ浦と五井の火力発電所間の導管から地元の大多喜ガスに卸す形で、01年から近くの化学工場への供給を開始。火力発電所の燃料として都市ガスの原料の液化天然ガス(LNG)を大量に使う同社は、千葉火力発電所から富津火力発電所を経て、海底を通って対岸の東扇島火力発電所に接続され、横浜と川崎の火力発電所がつながる導管網も持つ。

「導管から周辺の工場などに直接つないで販売する『直送』が全体の94%で、13年度のガス販売の営業収益は1207億5300万円。販売数量は131万トン(LNG換算)で、都市ガス大手3社に次ぐ4位となっている」と同社カスタマーサービス・カンパニーの佐藤美智夫ガス営業部長はいう。

東電が都市ガス会社の導管につないで販売する「託送」の割合は3%。託送なら遠くのユーザーへの販売も可能になるが、ネックとなるのが都市ガス会社に支払う託送料金の不透明性だ。託送料金は託送供給に関わる原価から算定し、「供給約款」に明示される。その計算に際して導管事業は本体と別会計の「会計分離」が行われている。日本ガス協会は、この会計分離を盾に法的分離には反対の立場を貫く。

しかし「細かい検証のしようがなく、小売り事業などでの人件費が一部付け回しされたり、都市ガス会社に有利な料金設定になっているのではないか」(ガス業界関係者)といった懸念が絶えずつきまとい、透明性の向上を望む声が以前からあった。

年初の「新・総合特別事業計画」で東電はガス販売の拡大を盛り込み、「3年後の目標は販売量170万トン、営業収益1600億円。直送だけでなく、託送での新規ユーザー開拓の営業にも力を入れていきたい。自由化はチャンスだが、それを生かすためにも中立性を確保してほしい」と佐藤部長は話す。

そして、託送を積極的に活用してきた新規参入者が関西電力だ。同社は13年度に86万トンのガスを販売し、754億円の営業収益をあげている。13年度末時点で国内のガス事業での託送供給実績は85件あり、このうち65件が同社のもの。ガス事業をリードするグループ経営推進本部の北村仁一郎副本部長は託送料金の不透明性に加えて、制度の使いづらさを指摘する。

「託送の検討に際して1回20万円の検討料がかかる。またその検討にかかる期間が約2カ月。大口の顧客ならまだしも、これが全面自由化に進み、一つひとつの家庭に託送しようとした際にもこれらが課せられるようでは、小回りのきいた事業展開ができない」

現在の導管の敷設や管理の費用は総括原価という形でガス料金に負荷されてきた。つまり、導管はガス料金という利用者のお金でつくった“公共財”に等しい。それだけにガス行政に詳しい経済紙の記者も、「電力で法的分離が決まったいま、ガスもそれにならう形になるのは間違いない」と見ている。