ソフトバンクがマルチブランド化を目指す理由

孫子の第七「軍争編」にある“風林火山”について、よく見ると孫正義氏の「風林火山海」には、最後に「海」の一文字が追加されています。

「疾風のように行動するかと思えば、林のように静まりかえる。燃えさかる火のように襲撃すると思えば、山のごとく微動だにしない。暗闇に身をひそめたかと思えば、万雷のようにとどろきわたる」(書籍『孫子・呉子』守屋洋より)

上記の孫子の文言を受けての、正義氏のバージョンアップの理由はユニークで思慮に飛んでいます。戦いに、勝者として勝つだけでなく戦いを収める「海」のような存在を目指すことを採り入れているのです。

「「風林火山」の戦いが終わると、戦場は死屍累々としている。しかし、焼け野原のままではそこからまた新たな戦いが始まってしまう。勝者が、広い、深い、静かな海のように、すべてを飲み込んで、天下を平定して初めて戦いが終わる」(書籍『孫の二乗の法則』より)

正義氏は、単一事業ではなく「企業群」「マルチブランド」にも信念を持って取り組んでいます。例えば30年程度の寿命で考えるなら、シンブルブランドで一事業に専念するほうが効率的なのですが、時代を超えて成長を続けるためには「マルチブランドを持つ企業グループ」であることが不可欠との考えで事業を進めてきたのです。

ソフトバンクという稀に見る成長を成し遂げた企業と、創業者である孫正義氏。その行動理念と実際の戦いの姿は、「孫子の兵法」を現代ビジネスに縦横無尽に使いこなす君主をイメージさせます。また極めて果敢な挑戦をしながらも、その裏では事業リスクを極限まで減らしていく工夫を常に怠らないことも、「不敗をもっとも大切なものとする」孫子の兵法の思想と完全に一致しているのです。

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