もう1冊は、本田直之『あたらしい働き方』(ダイヤモンド社)だ。旧態依然とした会社を知名度だけで選ぶのではなく、新しい基準で自分に合った会社に入社することが「ハッピー」につながると説いている。
この本の注意点は、パタゴニアやスタートトゥデイに代表される取材先企業の「偏り」にあると、佐藤氏は指摘する。
「会社員で自由な働き方が許されるのは、オーナー企業でトップに好かれている期間に限られます。宗教と同じですよ。トップが教祖様で社員はみな信者。ハマっている間はすごくハッピーかもしれませんが、熱が冷めたら一気に嫌になるリスクがあります」
逆に言えば、本田氏のガイドを参考にして、自分にハマる企業を見つけてリスク覚悟で入社するのであれば幸せに働けるかもしれない。
ベストセラーでも、腑に落ちない本は無視
前出の吉田氏によれば、1対1の空間で著者と深く対話する読書は、テレビやネットと比べても影響を受けやすく、危険度が高い。では、数多くの「売れ筋ビジネス書」とうまく付き合うにはどうすればいいのか。
「ビジネス書のエッセンスは第1章と目次に凝縮されています。パラパラと立ち読みすれば、自分の腑に落ちるかを判断できる。落ちない本はベストセラーでも無視しましょう」(吉田氏)
ちなみに、筆者が最近「腑に落ちる」と感じたのは、渡邉正裕『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済)だ。
グローバル時代の職業を「スキルタイプ」と「日本人メリット」の2軸で大胆に切り分け、それぞれに処方箋を出している。筆者も、読後は余計なスキルアップ努力やキャリアチェンジ妄想が激減し、目の前の仕事に集中できた。高揚感よりも納得感を重視すれば、自分に最適なビジネス書に出合えるのだ。
(早川智哉=撮影)