楽天日本一の立役者

福良以外の他のコーチにも意見を求めると、清水雅治という外野守備・走塁コーチが積極的に意見を言ってくれた。私が就任した08年は、ドラフト1位で中田翔が入団し、3年目の遊撃手・陽岱鋼(当時は陽仲壽)、投手から外野手に転向した糸井嘉男(現オリックス)が強化指定選手だった。そう、現在では12球団を代表する外野手の育成に手腕を発揮してくれたのだ。中田の場合は将来の四番打者に育てたいと起用していたが、どうしても僅差の試合終盤では守備固めを使わざるをえなかった。だが、清水の「僕が責任を持って上手くしますから、しばらく目を瞑ってください」という熱意で、1試合を任せるようにした。そうやってクラゲ型の組織図で風通しをよくした結果が、若い選手たちを育て、09年の優勝にもつながったと思っている。

球団創設9年目で日本一に輝いた東北楽天でも、シーズン後半に岡島豪郎という2年目の若手が一番打者に抜擢されて力を発揮した。岡島の本来のポジションは捕手なのだが、嶋基宏が正捕手に定着したため、なかなか出場機会を得られなかった。そこで、ミートの上手い打撃センスを眠らせておくのはもったいないと、外野守備・走塁担当の米村理コーチが星野監督に進言し、外野守備を鍛えて立派な戦力に仕上げたという。

こうした成功例を見ても、現代のプロ野球チームでは、高い実績を挙げる監督ほど各部門に優秀な参謀役を持っていると言えるだろう。