カゴメがこうした大型施設を使ったトマトの生産を始めたのは1999年、茨城県小美玉市「美野里菜園」が最初だ。小名浜菜園の操業開始は05年で、全国11カ所ある大型施設のなかでも、最大の規模となっている。生産量は年間3500トン。1つの温室では10カ月連続で収穫ができ、4つある温室の入植時期をずらすことで、1年を通じて生産を続けることができる。

政府の後押しをうけて、企業の農業参入が増えるなかで、「植物工場」への注目も高まっている。こうした小名浜菜園に代表されるカゴメの大型施設は多くの企業が視察に訪れる場所になっている。

生鮮事業は8年後に4倍へ!

ただ、ここで付け加えておきたいのは、カゴメの生鮮事業が参入から10年以上ずっと赤字だったという事実だ。2012年度から黒字化し、13年度には過去最高となる97億円を売り上げたが、道のりは険しかった。

カゴメの菜園は、農業先進国のオランダの施設を導入したものだ。室内の温度、ガラス窓の開度といった環境は全てコンピュータによって一定に保たれ、日射量に応じて水の量や肥料、光合成に必要な二酸化炭素の濃度も自動的に調整される。最新のテクノロジーにより、「工場」のように安定した収穫が見込める、という触れ込みだった。しかし計画通りにはいかなかった。

「天候が異なる日本でこの施設を使いこなすためには、トマトとしっかり会話のできる人材を育て、職員の効率的なマネジメントを確立させる必要がありました。実際にここでまともに生産ができるようになるまでに5年かかった。それまではトライ&エラーの連続だったんですよ」(永田代表)

では、カゴメはなぜそうまでして生鮮事業にこだわってきたのだろうか。寺田直行社長に聞くと、「その間に事業の撤退を望む声は社内に全く聞かれなかった」という。

「カゴメという会社はそもそも農家から始まった企業。特にトマトについては、うちがやらなくてどこがやる、という思いを常に持ち続けてきたんです」