「あなたが小学生のときに読んだ本で、いまの小学生にお薦めしたい本を教えてください」。そんな内容のアンケートを現役東大生にお願いしたところ、延べ400冊以上の書名が挙げられた。ずらり並んだお薦め本のほとんどは、名作や古典、ロングセラーだ。頭のいい子は小学生時代、王道の作品群を当たり前のように読んできたことがうかがえる。

成績がよい子ほどたくさん本を読んでいる

「ここに挙がったほとんどの本は、過去に中学受験の国語の問題で使われています。逆に、よくテストで使われるけれど、ランキングに入っていないのは、岩波ジュニア新書などの論説文やエッセーですね。やはり子供は、説明的な文章よりも物語を好むのでしょう」

50冊(※)の感想を話してくれたのは、京阪神地区を中心に中学受験指導を行っている浜学園の国語科講師・木村潤一先生。同学園では、小学生の読書に関して興味深い調査を行っている。浜学園に通う4年生以上の読書量を調べたところ、レベルが上位のクラスほど読書量が多いという。1カ月の平均読書冊数は、上位クラスから順に8.35冊、6.92冊、5.12冊で、勉強ができる子ほどたくさん本を読んでいるということになる。成績のよい子は勉強が忙しくて読書量が少なくなると思いきや、結果は反対だった。

「塾の教材やテストで、物語やエッセーなどいろいろな本を活用していますが、引用するのは本の中の一部でしかないんですね。そこで授業後に、全体を読んでみようと自ら考えるのは、やはり上位クラスの子供たちです。もともと知的好奇心が強く、自分の知らないことがあったらすぐに知りたがる子が多い。教材で使った翌日には、本を手に入れて読んでいる子もいますよ」

一方で、本を読まない子供もいる。そうした子の保護者からは、本を読ませるべきかという質問が多く寄せられるそうだ。木村先生は、とにかく無理強いをせず、好きな本を好きなように読ませることが大切だという。

「子供が選ぶ本は、名作文学などを読ませたい親の思惑どおりにいかないことも多いでしょう。しかし活字に慣れさせるためには、とにかく多くの本を読んだほうがいい」

個人的な意見と前置きしたうえで、木村先生はこのように続ける。

「読書で、すぐに国語の成績がアップするわけではありません。けれど本を読むことは、その子にとって必ずプラスになる。普段、子供たちを指導していて感じるのは、彼らの生きている世界が狭いということです。当たり前ですが経験が少ないので、まだまだ他人の気持ちを読み取ることができません。読書をすることで、そうした経験値を上げられるんですね。また客観的視点を持つことができるし、語彙(ごい)も増える。だから塾としても、本を読むことを推奨しているんです」

※50冊のリストは、現在発売中の小社刊『プレジデントFamily 2014年秋号』をご覧ください。

【関連記事】
「頭がいい子」の家にある意外な共通点
女の子が東大に入ると損? いいえ、日本一幸せになれます。
教科書を7回読むだけで、断然トップになれた!(前編)
東大一直線の子、二流止まりの子 それぞれの思考パターン
塾長は見た! 合格家族と不合格家族の親子ドラマ【中学受験編】