なぜ若手社員は店長になりたくないのか
小売業や飲食業などでは、若手社員の間で「店長にはなりたくない」という人が少なくありません。これを私は、『店長になりたくない症候群』と呼んでいますが、彼らの理由はこうです。
「店長になっても、たいして給料は上がらないし」「残業代がつかなくなって、かえって年収が下がる人もいるし」「人件費を増やせないから、店長自身が休みなく夜中まで働いて」「その割に、業績が悪いと本部や社長からガミガミ言われて」「部下やパートタイマーからも文句を言われるし」とても希望のもてるポストじゃないよ、というのです。
2008年、マクドナルドの店長が残業代の支払いを会社に求めて訴訟を起こしました。店長の仕事が法律で定められた管理監督者に該当すれば、会社は残業代を支払う義務はありません。ところが裁判所は、この店長の主張を支持し、会社側に残業代の支払いを命じました。そのため「名ばかり管理職」(会社は管理職の扱いをしているつもりでも、実態は管理職ではない)という言葉が流行りました。
これは店舗ビジネスの業界だけではありません。メーカーや商社なら『課長になりたくない症候群』ということになるでしょう。新入社員向けの意識調査などでは、「出世」に対する意欲はやや上昇しているようですが、実際の管理職は待遇的に報われるポジションなのでしょうか。
表は、日本貿易振興機構(JETRO)の調査データを基に、職種ごとの平均給与を国別に指標化したものです。これを見ると、工場作業職の平均給与を1.0とした時、日本はエンジニアで1.4、中間管理職(課長クラス)で1.8となっています。