中古マンションの需要が少しずつ伸びている。同時に、壁紙や床からキッチンなどの設備まで、嗜好に合わせて作り替えられるリノベーション(以下、リノベ)も注目されている。

この流れを受けて増えているのが、不動産会社が個人から中古マンションを買い取り、リフォーム会社に依頼してリノベしたうえで販売する「中古マンション買い取り再販」というビジネスモデルだ。こうしたリノベ済みマンションは、リフォーム前の中古物件に工事費用が上乗せされる分、割高になるが、同エリア、同グレードの設備を備えた新築マンションよりは割安で購入できる点が人気だ。

ところが、闇雲に飛びつくと、落とし穴に陥りやすい。

リノベーションとは、建物の構造体と間取りなどの取り替え可能な部分(インフィル)のうち、ライフスタイルに合わせてインフィルを作り替えることをいう。そのため、耐震性能など構造体への依存度が高いものについては、新築時の性能に左右される。

たとえば、震度6強~7程度の地震に耐えられるようマンションを設計することを定めた新耐震基準に適合しているかどうかは、1981年6月1日以降に建築確認を受けたかどうかによる。それ以前の中古マンションで、耐震補強工事を希望する場合、マンションの管理組合の同意が必要で、自分の一存では補強は難しい。また、耐震診断が行われていなければ、先々も補強は行われない可能性もある。

インフィルについては、リフォームを請け負う工事会社の実力によっても、出来が左右される。たとえば、浴室天井裏の換気ダクトを施工するとき、不慣れな業者だと、接続部にすき間があるまま工事を終え、そこから漏れた湿気によって天井裏がカビだらけになったという被害があった。

個人でリノベするよりも、住宅専門の不動産会社が携わったリノベ済み物件のほうが安心と思いきや、この業界は未成熟。業者の実力にはばらつきがあり、法整備も不十分というのが実情。物件や工事会社を見極める責任の大部分を購入者が負わなければならない。