その陰で開発を請け負って莫大な利益を上げてきたデベロッパーは、開発権限を握っている地方の党書記、市長から事務手続きを行う末端の役人まで、微に入り細に入りリベートをばら撒いてきた。
上位の役人に対してのキックバックはほとんど海外で行われる。しばしば登場するのがマカオのカジノだ。当該の役人がマカオに旅行してカジノに行くとハイローラー(大金を賭けに使う人)用のVIPルームに通されて1000ドルチップを買わされる。そこまでは全部自腹。その1000ドルが翌朝には300万ドルとか400万ドルに増えているという寸法。表向きは自分の金で遊んで増やしただけだから何の問題もない。ほかにも子弟の海外留学の面倒を見たり、豪奢な別荘や車を与えたり……。こうしたキックバックの仕組みは、中国の津々浦々で見受けられる。たとえ土地バブルが弾けても、共産党が許認可権限を握っている限り、政治家や役人の不正・腐敗はなくならないだろう。
有効期限切れになりつつある日本バッシング
不正腐敗がどれだけ横行しても、最高指導部である中央政治局常務委員にまでなった大物は汚職腐敗で調査をされないというのがこれまでの不文律だった。事実、ニューヨーク・タイムズに巨額蓄財を報じられた温家宝前首相は別段、罪に問われていない。
では周永康氏はなぜ当局の摘発を受けたのかといえば、権力闘争以外の何物でもない。習近平指導部はいまだに政界や官界、軍や財界に強い影響力を持っている「江沢民派」と激烈な権力闘争を展開している。周永康氏はその「江沢民派」の重鎮であり、習近平氏が常務委員ナンバー1の総書記に任命される際には、薄煕来氏と謀って習近平氏の総書記就任を妨害しようとしたのだ。元重慶市長の薄煕来氏に次いで周永康氏が狙われたのは、自らのトップ就任に反対した不満分子、将来に向けた危険因子を排除するため。腐敗は口実にすぎない。つまりは権力闘争に基づく粛清なのだ。