最後は、シズル感を見つけ出すことです。

広告業界では商品をおいしそうに見せる演出のことを「シズル」と呼びます。僕はこの言葉をもう少し広く捉え、思わず手に取りたくなるような「そのものらしさ」と定義しています。

的確なシズルを見つけ出すために、僕が使うのは「~っぽい分類」という手法です。たとえば文房具の場合、「未来っぽい」ものではなく、「昭和っぽい」と考える人がほとんどじゃないでしょうか。そう分類していったとき、ノスタルジーを感じさせるデザインを入れようと考えて生まれたのが、表紙左上のロゴでした。金色であしらっているのもシズル感を出すためです。

シズル感がなくても一時的にヒットすることはあります。でも、永く愛されるデザインにはなりません。

文具大賞受賞の日記帳としても使えるノート(STALOGY 365デイズノート)

2014年7月に発表された「第23回日本文具大賞」にてデザイン部門優秀賞を受賞。A5、B5の2サイズで合計368ページ、厚さは14ミリメートル。時刻を表す数字、日付と曜日、グリッドを記載。日記帳やスケジュール帳としても使用できるよう設計された。

水野 学
1972年、東京都生まれ。good design company代表。慶應義塾大学特別招聘准教授。ニトムズの文具シリーズ「STALOGY」のほか、主な仕事に熊本県公式キャラクター「くまモン」デザイン、「中川政七商店」ブランディングなど。近著に『センスは知識からはじまる』。
(構成=矢倉比呂 撮影=佐藤新也)
【関連記事】
293億円 -熊本で熊は絶滅でも「くまモン」さらに増殖中
販売総数4億本!「消せるボールペン」大成功の法則
なぜ3000円の男用パンツが86万枚も売れたか
「日焼けしたくない!」女性ドライバー107人の意見が生んだヒット商品
なぜ、沖縄では赤色の商品が売れるのか?