一方、金融分野を幅広く取材するジャーナリストの鈴木雅光氏が、ユニークなマーケティング戦略を取り入れて成長を遂げるベンチャー企業として注目しているのが、岐阜の葬儀会社のメモリアだ。

「従来のお葬式は惜しい人を亡くしたことを皆で悼む場でした。それを同社では亡くなった人への感謝の気持ちを捧げる場にすべく、故人やご遺族の希望を引き出し、それを実現する独自の“ミッションマーケティング”を徹底させています。葬儀業界も低価格競争が激しくなっていますが、故人に対して感謝の意を表そうと考える遺族の方との間で値引きの話はほとんど出ず、自然と受注単価がアップしていくわけです」

要はオーダーメードの葬儀をプロデュースしていくことで、付加価値も高めていく戦術である。ただし、勘違いしてはいけないのは、同社だけが利を得ているわけでないことだ。顧客である遺族の満足する葬儀を提供することによって、お互いに“ウィン-ウィン”の関係を構築していることが重要なポイントなのだ。

母親が始めた浄化槽メンテナンス会社を引き継いだ松岡正泰社長が、メモリアの前身である松岡屋葬儀社を立ち上げたのは00年。当初は月に3件ほどしか依頼がなく厳しい時期もあったが、ある葬儀で故人のおばあさんに「ありがとう」と声をかける遺族の姿を目にする。その光景に感動し涙した瞬間、松岡社長は「ありがとうといえるお葬式」という“ミッション”を見出したようである。

同社は岐阜市を含めた県南西部のエリアで6つの葬儀専用ホールを展開し、08年からは大垣で結婚式場の運営もスタートさせた。前年度の売り上げ実績は約16億円で県内トップの葬儀会社となっている。松岡社長の当面の目標は、2年後の売上高50億円の達成という。