貸会議室事業のブルー・オーシャン化

品川駅から徒歩3分の「TKPガーデンシティ品川」の会議室(TKP=写真)

「05年の設立ながら、わずか7年のうちに業界トップに躍り出て、2月には米国のニューヨーク進出を果たすベンチャー企業があります」と、前出の松室氏が紹介するのが貸会議室を全国で展開するティーケーピー(TKP)である。

元伊藤忠商事の社員だった河野貴輝社長が32歳のときに独立して初めて手掛けた物件が、東京・六本木のミッドタウンの工事現場近くにある取り壊しの決まっていた3階建ての2つのフロアだった。ワンフロアはゼネコンが事務所としてすぐに借り上げてくれ、その家賃収入で2つのフロア分の賃料が十分に賄えた。

「ディスカウントショップで1つ800円のイスを50脚買ってきて、残りのワンフロアを貸会議室にし、ネット申し込み限定、1時間当たり5000円の完全前金制で受け付けを始めました。するとIT企業などからの申し込みが相次いで、月に100時間も稼働するようになったのです」と河野社長は振り返る。

そこで貸会議室ビジネスの潜在的なニーズに気づいた河野社長は、駅から徒歩5分以内など立地のよい場所にある空いたオフィスビルを借り上げ、次々と貸会議室を展開していく。その延長線上で「オフィスビルのなかにコンシェルジュサービスなどホテルと同水準のクオリティを持った会議室を提供する」(河野社長)というコンセプトで展開を始めたのが「TKPカンファレンスセンター」だ。

次第に収容規模が100人、200人単位に増えていくと、宿泊先や交通の手配のニーズが出てくる。また、食事のケータリングに加えて、研修講師の手配などのニーズも発生する。同社はそれらのアウトソーシング先としての受け皿を順次整えることで、成熟した“レッド・オーシャン”と見られていた貸会議室事業を、付加価値の高い“ブルー・オーシャン”へ転換することに成功したのだ。

同社が展開する貸会議室は1321室(8月29日現在)を数える。面積ベースで見た市場シェアは推計で59%と断トツだ。売上高は前年度の60億円から今年度85億円、来年度120億円を見込んでいる。この2月にはニューヨークのマンハッタンに1000坪規模の「TKPニューヨークカンファレンスセンター」がオープンする(2013年1月時点)。

「採用セミナーの上手な運営方法などに関する引き合いが数多くあるのですが、当社にはこれまでの取り組みでさまざまなノウハウが蓄積されています。そうしたコンテンツを提供することでさらに付加価値を高めることができ、売上高1000億円の達成を早く実現したいと考えています」と河野社長は語る。