(2)能力開発の機会、褒賞の種類を個々人に合わせる
リーダーは自分の関心を振り分けるにあたり、スター・パフォーマーとさほど輝いていない部下の二者択一にする必要はない。「あなたの時間と関心のすべてをAプレーヤーかBプレーヤーのどちらか一方に注ぐべきだということではない」と、スーザン・K・ウェアリー・アンド・アソシエイツの社長、スーザン・K・ウェアリーは言う。「どちらのグループの社員も関心を必要としている。ただ、必要な関心の種類が違うのだ」。
たとえば、トップ・パフォーマーは、自分の成功戦略を他の人々に発表する機会を与えられたとき、最も勢いづく傾向があり、さほど輝いていないパフォーマーは、問題解決のためのより率直な面談やコーチングを受けたほうがやる気を起こすものだ。ウェアリーはそう指摘する。
能力開発の機会についても二者択一の考え方は避けるべきだ。Aプレーヤーの能力開発は、一般に自分の仕事の範囲を広げ、組織のなかでさらに重要な役割を担う準備をすることに焦点があてられる。BプレーヤーもAプレーヤーと同等の関心を払われてしかるべきで、その成果も少しもひけをとらないものになりうる。新しい役割を担う準備ができていない有用な社員も、現在のポジションでより優れた仕事をし、できればその役割のなかで新しい責務を引き受けるのに役立つ訓練を受けることで、やはり成長できるのだ。
能力開発の機会を個々人のニーズに合わせるように、褒賞もまた「個々人の望みに応じて」与えるべきだと、コフマンは言う。
オプティマム・プリント・ソリューションズの幹部たちは、プロファイリングによって社員のコア人格(支配的、自立心が強い、従順等々)を突き止め、それぞれに適したインセンティブを与えている。たとえば、営業職など、きわめて競争心の強い社員は、同社の「アチーブメント・クラブ」を通じて与えられる豪華な褒美(たとえば1週間の旅行)をめざしてしのぎを削る。
「しかしすべての社員が、それほど競争心が強いわけではない」と、同社の社長でオーナー、ドロシー・マーティンは言う。そのため、毎日職場に来て、きちんと仕事をこなす「堅実な社員」向けに、いくぶん小型の褒美を出す別のプログラムもある。また、とくにチーム・スピリット溢れる社員のためには、同僚が推薦し合い、受賞者にはその人の関心に合わせた賞品が贈られる「スター賞」が設けられている。
「不平等な遇し方については、不満の声が上がることもある」と、マーティンは言う。「だが、しょっちゅう不満を言っている社員は概して最もパフォーマンスの悪い社員だ。彼らは会社が何をしようと不満なのであり、自ら進んで会社をやめてしまうことが多い」。
褒賞は必ずしもあらたまった形をとる必要はないと、デロングは言う。Aプレーヤーは昇進などの目に見える褒賞に価値を置くかもしれないが、優秀なBプレーヤーに会社の感謝の気持ちを伝え、彼らを会社に引き留めておくには、簡単な手書きの感謝状や、小規模な感謝の集いだけでも十分かもしれない。