第一歩は安否確認の環境を整えること
少し古いデータになるが、家族の介護・看護を理由に離職する人は、2006年10月からの1年間で約14万4800人に達したという。その後の統計データは明らかになっていないが、その数は15万人を突破しているだろう。働き盛りの男性が仕事を辞めるケースも多い。
一般的に、介護が本当に必要になるのは80代後半であることから計算すると、その子供の年齢は50代後半に差しかかったあたり。親の「老い」の問題は、ひとつ間違うと、子供世代の人生を狂わせる危険をはらんでいるのだ。
夫婦2人で換算すると、抱える老親の数は4人。現代親不孝論ではないが、一定の割り切りのもとで介護への対処をしたほうがいい。離れて暮らす老親に介護が必要になった場合はなおさらのこと。なし崩しで無計画な遠距離介護に陥らないように十分な対策が必要である。
まず考えるべきは、離れたところに暮らす老親の安否を把握すること。何かあったときにすぐ駆けつけることができないので、安否確認の手段を用意したい。具体的には、身近な電化製品を活用した「見守りサービス」がある。老親が携帯電話を充電すると、その情報が離れた家族にメールされる。電気ポットやガスの利用状況が家族のパソコンに送られるサービスもある。
万が一に備える方法としては、「緊急通報サービス」の利用が役立つ。老親の自宅に緊急時の「専用ボタン」を設置し、急な体調変化などが起きたときにボタンを押すと、自治体や専門の業者に知らせる仕組みだ。自宅で倒れ、意識がなくなったきなどに適切な処置を行うため、緊急の連絡先や服用薬、かかりつけ医などの情報を書き込んだ容器を冷蔵庫に保管しておく「救急医療情報キット」を導入する自治体も増えている。