残念ながらビジネスでも、ルールづくりについては圧倒的に欧米人に分がある。たとえば工業分野の国際規格としてISOが知られているが、幹事国を引き受けているのはいまだ欧米が主流だ。個人的に日本のJISのほうが規格として優れていると思うが、いまや日本国内でもISOを取らないと仕事にならない状況になっている。
ルールづくりで欧米人に後れを取るのは、そもそもルール観に違いがあるからだろう。私がホンダに入社したとき、日本と欧米のメーカーの戦略の違いを知って驚いたことがある。排ガス要件や衝突要件など、自動車の規制は各国で異なる。そのためホンダは各国の規制に合わせて仕様を変えた。おそらく当時は、1車種につき仕様が10近くあったはずだ。一方、アメリカは1車種ほぼ1仕様。日本に売るからといって仕様を変えず、左ハンドルのままだった。日本人は自ら進んでルールに従うが、欧米人は自分の都合に合わせてルールを変えようとする。根底から考え方が違うのだ。
日本の自動車が世界中で愛されたように、かつては各国のローカルルールに素早く順応する日本人の特性が、ビジネス上の強みになっていた時代があった。
しかし、グローバル化によってルールが統一される時代になると、ルールへの対応力より、ルールづくりへの参画度が勝負を分けるようになる。
日本人は、「ルールはお上がつくるもの。自分たちは粛々と従えばいい」と思っている。ルールを変更することは、「フェアではない」とすら感じているのではないだろうか。しかし、それでは「ルールは随時変えるもの」というスタンスの欧米人には太刀打ちできない。
既存のルールをないがしろにしろというわけではない。従来どおりに規則を尊重しつつ、おかしなものについては異を唱え、ルールづくりや変更にも積極的に関わる。国際競争を勝ち抜くには、その姿勢が大切だ。